モチクラ偏差値47だったVoicyがAAA獲得までにやった5つのこと

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組織サーベイ、最高評価のAAAを獲得


こんにちは!Voicyで主に人事領域を管掌している執行役員の勝村です。 今日は嬉しい報告と、そのプロセスについてお話しさせてください。
Voicyではリンクアンドモチベーション社のモチベーションクラウドで組織状態を定量化し組織開発を行っているのですが、2021年9月に実施したサーベイでエンゲージメントスコア67を記録し、目標としていたランクAAAを獲得することができました。
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更に3ヶ月後の12月に行ったサーベイでは、エンゲージメントスコア68で1PUP、ランクもAAAを継続獲得できました!
AAAとはモチクラ利用企業の上位1〜2%に位置し、この結果に社内は喜びと驚きに包まれました。
しかしわずか2年前、2019年12月のVoicyの組織状態は離職率67%と最悪な状態で、一段落つきモチクラを導入した2020年4月の初回サーベイでは、新入社員を除いた既存社員のスコアは47、ランクはCCCという結果でした。
モチクラスコアは52を中央値とした偏差値形式の算出のため、47というスコアは分かりやすく社会水準以下ということになります。
事実、当時の組織状態は今と比較すればいいものではありませんでしたが、私としては入社して3ヶ月間懸命に組織開発をした結果として突きつけられたスコアとなり、打ち拉がれたことを昨日のことのように覚えています(笑)。
Voicyの組織崩壊から再生までのHOWは、ありがたいことに多くのメディアで断片的に取り上げて頂きましたが、今回はモチクラスコアの流れを振り返る中で、線としてそれをご紹介したいと思います。

①退職希望者の声からカルチャーマッチを図る


先述の通り、2019年11月〜2020年2月位にかけて、Voicyは大崩壊を起こしていました。
そもそも2019年1月より本格的に採用活動を始めたため、会社として初の組織化にチャレンジをした結果ではありましたが、2019年夏前には40名弱の組織に膨れ上がり、風船が割れるように年度末10名強にまで減少しました。
Voicyでは今でも入社時にワークサンプルテストがあり、半日程度会社で一緒に働く機会があるのですが、2019年10月に選考を受けた私は、その雰囲気の悪さに苦笑いし、選考過程で見たwevoxスコアに驚愕しました。
「これは増員するって言ってるけど、入社する頃には一度軽く弾けてるかもな〜」と一抹の不安を感じながらも「それくらいがオモロいじゃん!」と入社しましたが、入社したら想像以上に崩壊していて、人事としては辛い日々を過ごしました。
そんな中私がまず手をつけたことは「退職者の声を聞き、そこで得た情報を組織改善の高い優先順位に置く」ことです。
退職者が感じている課題は改善時の即効性が高く、既存社員の痛みにも必ず繋がっています。なので入社直後でしたが、まず退職が決まっていた社員との時間を多く持ちました。
この機会で多くの組織課題解決のための情報を手に入れることができたのですが、同時に退職者と話す中で感じたことは、多くの人がまず自分のことから考えているスタンスへの違和感でした。(もちろん当時のVoicyが彼らをそうさせてしまったというのはあると思います)
これは次に既存社員と話していく中で、崩壊後も残ってくれた社員のプロダクトファーストや他者を優先する姿勢を改めて感じ、「これがカルチャーマッチというものか」と実感することにも繋がりました。
当たり前のことなのかもしれませんが、新卒中心でカルチャーマッチが前提の会社で育った私からするとこれは大きな発見であり、改めて残ってくれた社員を大切にしたい気持ちと、カルチャーマッチを最優先にした組織づくりをしていこうという決意に繋がりました。
この時の発見は「能力がいくら高くても、カルチャーに合わない人材は採用しない」という今のVoicyの採用スタンスに大きな影響を与えています。

②採用時に期待値を揃える


エントリーマネジメントという言葉が流行って久しいですが、今回のスコアを語る上でこれは最重要ポイントとなります。
HOWはVoicy Advent Calendar 2020の記事に書いたので是非そちらをご覧いただければと思いますが、2020年は特にその中でも面接やオファー面談での期待値調整を強めに行いました。
これによる分かりやすい結果が、モチクラの詳細スコアに出ています。
下記はリンモチ社が出している、一般的な企業のスコア例です。 詳細な項目単位スコアが分布する4象限なのですが、リンモチ社からはざっくり言えば、左上の青の項目を改善しつつ、右下の黄の項目のコストを下げましょう、というコンサルを受けることになります。
それに対してVoicyの最新スコアはこちら。
青や黄部分にほぼ項目がないことは一目瞭然だと思います。 リンモチ社からも「異常だ」と言われたこの結果ですが(笑)、社員の期待と満足が綺麗に擦りあっているため、このような帯状分布になります。
もちろんコロナ禍にアジャストして人事制度を整えたり
社員の立ち上がりを支援するオンボーディングを改善し続けたこと
などもスコアには大きく寄与していると思いますが、こういった施策は満足度を上げることにしかヒットしません。
満足度は乾きます。改善すると一時的にいい組織になったように見えますが、永遠と社員に期待され続ける負のループに陥ります。なので期待値にキャップをした状態を作ることが重要なのです。
期待値を会社が提供できる身の丈以上に感じさせないことを徹底できたことは組織開発に大きな影響を与えましたし、「いい会社だ」と胸を張ってアトラクトできるようになった今でも、同じくらい採用で大切にし続けている項目です。

③カルチャーの象徴社員が、意図のあるイベントをおこなう


②の時期である2020年は、コロナウイルスにより日本全体が未曾有な戦いに挑む年でもありました。
Voicyとしても、組織崩壊から立て直し、そして採用を加速するフェーズにおいては、このコロナ禍の掛け算は変数としてあまりに未知数であると判断し、あえてモチベーションや心理的安全性に寄るイベントを実施した期間でした。
こういったファニーなイベントやMVP制度などの新設は、エントリーマネージメントとの相乗効果で、満足度や働きやすさへ大きく影響し、カルチャーの浸透度を高め、とても意味あるものとなりました。
ただそこが組織開発の目的になることは、本質的ではありません。
もちろん自分たちが楽しく同じ方向を向いて働くことはアウトカムへ大きく影響するため、こういった施策も継続して行う必要があります。
ただ、私たちがなぜ組織として同じ時間を共有し、協力しあっているのか?それは、社会への新しい価値提供や、ステークホルダーの幸せのためであって、決して自分たちがただ楽しく働くためだけではありません。
そこで2021年はこれまでとは毛色を変え、社員全員がより事業やプロダクト・組織へ意識を向けるための企画や施策を打ちました。
例えば分かりやすいところでは社内イベント。これまでのようなイベントを続けながらも、社員が好きなパーソナリティを紹介し合う「MFV」(My Favorite Voicy)や、メンバーの仕事の価値観を共有する「3Rules」、社員全員で機能開発や売上向上などのためのディスカッションを行う「わたしの考えるさいきょうのVoicy」など、プロダクトや事業にメンバーが目を向けるキッカケを作ることを意図したイベントを行いました。
また組織開発においても、これまで人事主導で行っていたものを、手挙げ制で全社員を募る形に変更しました。これは、より社員一人一人の組織への意識を上げることが目的でした。
どのくらいのメンバーが協力してくれるか不安な中始まったプロジェクトでしたが、なんと社員の7割弱が参加する、私たちとしても想定以上の規模のプロジェクトになりました。
もちろん多くのメンバーが参加するため、それによる課題も新たに起きるのですが笑、このプロジェクトは1年弱という短い期間にも関わらず、
自社開発でピアボーナス制度を導入したり
社員の知られざる一面を掘り起こす社内ラジオ番組を生み出したり
行動指針の策定を0から行ったり
と、想定以上に多くのアウトプットを生み出すこととなりました。本当に社員のみんなに感謝の念が絶えません。
そしてこの一連において何よりも大切なことは、これをカルチャーの象徴的な社員に任せたことです。
実はこういったイベントや人事施策に関しては「何をやるか」よりも「誰がやるか」が重要な意味をもたらします。
Voicyには存在がほぼカルチャーと言ってもいい「みのりー」というメンバーがいます。このTwitter投稿だけ見ると仕事をサボって踊ってるだけに見えますが(笑)、Voicyを創業期から支えてきた中心的なメンバーです。
こういったカルチャーの象徴的な社員は会社にとって非常に重要な財産ですが、会社の雰囲気が悪い時期は槍玉に上がってしまったり、またどんどん専門的なスキルを持った社員が増える中で、自身の存在価値に悩むことが往々にあります。
彼女は人事の専門家ではありませんし、私が組織開発を行った方が効率的ではありますが、彼女が行った方が効果的な結果に繋がります。
カルチャーの象徴が中心であるため、社員は参加したくなりますし、手伝いたくなります。そして人事の専門家が中心でないため、参加者の当事者意識は上がり、結果的にアウトカムが最大化されます。そしてカルチャーの象徴自身も、存在の効果的な発揮場所を得ることができ、自身の成長にも繋がります。
彼女がVoicyのEXを引っ張ったことが、スコアをAAランクにまで一気に引き上げた一番の要因であったと思っています。私が中心であったら、このような結果には絶対になっていません。

④全員が全方向で要望度を上げ合う


この時期は、おかしいことを言っているように聞こえるかもしれませんし、誤解が生まれるかもしれませんが、モチクラスコアはAAからAに下げ、離職率は9%から30%まで上げる、という変わった目標を掲げた時期でした。
もちろん人事としてはそんな目標掲げたくないですし、目標に反比例しますが、そうならないように全力で努めます。
ただ会社がマネタイズに本格的にチャレンジし、これまで以上に専門的なスキルを持った社員も増え、また外部環境としてもGAFAやTwitter・Spotifyといった海外勢の音声業界への参入も相次ぐ中で、経営としては逆に満足度が高いとも言えるAAというスコアを課題だと捉えました。もっともっとストイックでないといけないのではないか?と。
私自身こちらの記事にもある通り、緒方とこれまで以上に向き合いましたし、お互いに要望し合いました。それは辛い時間でしたが、とても有意義な時間になりました。緒方が社員に頼るようになったり、自分を開示するようになったりと、経営者として大きく変化をしたのもこの時期でした。
リーダーメンバーの合宿回数も増やし、事業やプロダクト・組織に対して本音で本気でぶつかって意見する場を増やしました。
またそこでリーダーからメンバーに対しての要望度も高く強くすることで認識を合わせ、キックオフでメンバーにも、メンバー間でもこれまで以上に高いアウトカムを求め合うように要望しました。
これは一度大きな組織崩壊を経験した私たちにとってはとても恐怖を感じるチャレンジでしたが、より強い組織になるためには必要なことだと覚悟を決めて、例え離職率が上がったとしても、脱皮して強い組織にならなければいけないという強い意思を持って行いました。
もちろん先述の通り人事として大手を広げてこれを見ているわけではなく、136-以降6ヶ月毎の人事面談を強化したり、小さなほつれでも早急に人事配置で解決したり、メンバー間のコミュニケーションが増えるための企画を打つなど、先手で最大限ワークできるように努めました。
結果としてモチクラスコアは下がり、離職率も上がりましたが、スコアはAAの範囲内での低下に留まり、離職率も今日現在で未だ17%と、社員の成長と意識の高さに助けられる結果となりました。
何より組織開発によって、分かりやすく多方面でアウトカムのレベルが上がったことは、私たちにとって非常に大きな収穫になりました。

⑤最後は信じ抜く


そんなこんなで、一度意図的に屈伸したおかげで組織力は上がり、次のサーベイではAAAを獲得でき、それを継続更新することができました。
本当に嬉しかったのですが、実は私が最初に感じた感情は無力感でした。
人事が打てる施策って、結局自分1人で完結できることなんて存在しないし、なんなら直接関わって影響を与えれることなんて数えるほどしかない。
営業をやっていた時を思い出すと、自分でやってやった感に満ち溢れ、表彰を受けるたびに自己肯定感MAXって感じでしたが(ここに僕の人間としての課題が詰まっていそうですが(笑)。)、人事になってからはこういった高い実績を出すたびに、自己肯定感は下がります。自分はなんて無力なんだ、みんなの協力がないとなんの結果も出せねぇな、と。
ただ組織開発ってそこが面白いんですよね。最高難易度のチーム戦的な。最善を尽くした採用を行い、可能な限り立ち上がりや躓きをフォローし、信頼し合って厳しい点も含めて向き合った後は、そういった自慢の社員を信じるしかできない。
その信じる力がメンバーにも伝わり、全員で組織を作り、いいプロダクトやサービスを市場に届けるという結果に繋がっていくのではないか。そう思っています。
 

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