<シリーズ第一弾>【27.3億を調達したVoicyが考える】声で未来を変える“プロダクト/エンジニアリング”とは

Voicyはこの度、27.3億円の資金調達を行うことができました。日々サービスを使ってくださる皆様のおかげです。改めてお礼をお伝えさせてください。ありがとうございます。
次のステージに向けたテーマは、「声で、未来を変える。」です。今後、どのように非連続的な成長を目指していくのか。代表緒方と各部門リーダー陣が三回に渡ってトークセッションを行い、これからのVoicyについて語りました。
第一弾は、プロダクトやエンジニアリングを軸に未来を考えます。
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<登壇者> ・緒方 憲太郎(代表取締役CEO) ・大枝 史典(プロダクトマネージャー) ・山元 亮典(エンジニアリングマネージャー)
<ファシリテート> ・勝村 泰久(人事執行役員)

27.3億の資金調達は“戦い”だった


(勝村)緒方さん、27.3億の資金調達は大変でしたね。
(緒方)めちゃめちゃ大変だったね(笑)。外から見ると、サッと上手いことやったように見えるかもしれないけど、一年半くらい試行錯誤して戦いました。
(勝村)資金調達ができるまでを振り返るとどうですか?
(緒方)2019年頭にシリーズAとして8億円を調達したのだけど、この資金は1〜2年半をかけて使う計画をしていて、今は既に3年半経っているので、実はもう資金が足りなかったわけです。去年(2021年)の夏から投資家の方々と話はしていたものの、日本はBtoCサービスが評価されにくい市場のため、まず興味を持ってくれる投資家を探すことが大変だった。Voicyの希望と合う投資家がおらず、ずっと探していて、年末に事業を理解して大きく投資をしてくださる方がようやく見つかって「よっしゃ!」と。そこから一緒に投資してくれる方を募ったのだけど、4月にはロシアのウクライナ侵攻により株価が下がったりして、少しでも早く調印したいとハラハラだったよ(笑)。
(勝村)まさにドラマみたいな状況でしたよね。調達ができそうでできなくて、やっとできると思ったら、今度はコロナウイルスや戦争で世界情勢が大きく変動して。
(緒方)そう。ただ、去年の夏よりも事業が形になってきていて、パーソナリティの中にも声でマネタイズできる方が増えていたので、良い形で資金調達に臨めたとも思うんだよね。
(勝村)今回の資金調達を受け、プロダクトおよびエンジニアリングという軸で、どう投資し、どんな未来にしていきたいと思っていますか?
(緒方)そうだね。社内含め、お金の利用用途はよく聞かれるようになりました。このステージでこれだけの金額を調達すると、「サービスはある程度できあがっていて、あとは広告にお金をかけて大きくするのか」と思われることも多いのですが、それは全く逆で。やりたいことの5%もできていないと思っていて、ここからまだまだ開発したい機能やサービスがたくさんあります。
僕たちは発信者が、声で喋るのが一番楽で、一番本人性が届いて、様々な形でマネタイズができて、ユーザーの愛情が感じられ、自分のコンテンツを資産にすることができるプラットフォームをつくりたくて、そのためにはまだまだやれる機能があるんです。発信者にとっての最強のプラットフォームになるまで、まだ一合目、二合目くらいだと思っているので、その未来に向けて挑戦と試行錯誤をしながら、まだ全力で走っていくフェーズだと思ってる。なのでお金は、チームをつくるための人件費や、その開発を進めるための期間に会社を存続させるためのコストになると思っていて、決して贅沢をできるわけではなく、むしろしっかりと開発環境をつくっていく必要がある。
ゆくゆくは世界中の人が使うレベルのサービスにしたいから、その未来まで見越した拡張性や品質もつくっていきたい。今までにない音声だからこその検索など、ボイステックと言われる領域にも勝負していきたいと思っています。
(勝村)たしかに。音声市場はまだマーケティングができるほど文化が醸成されていないので、会社としてプロダクトやテックと言われる領域の重要度が高まりますよね。機能や体験を通したバイラルを作っていかないといけないのは、面白さでもありますね。
(緒方)面白いと思う!PdM大枝やエンジニアリングマネージャー山元とプロダクト設計や機能についてよく話をするけど、日々それだけやりたいくらい楽しくて、デザイナーやPdMとミーティングした後はいつも「羨ましいな〜」と思ってるよ(笑)。
(勝村)PdMの大枝さん、代表のビジョンを聞いてどう感じました?
(大枝)ビジョンについてやプロダクトとしてどうあるべきかなど、普段から緒方と色々話すのですが、先程も“体験”という言葉があったように、Voicyでは体験や価値の提供をとても重要視していて、“ユーザーの幸せ”を考えて日々業務にあたっています。開発で実現したい機能や仕組みが、まだまだたくさんありますね。
クリエイターエコノミーという言葉がまさに当てはまると思いますが、今Voicyでは、パーソナリティがマネタイズをしてプラットフォームで成長していき、また良いコンテンツを生んでもらえるような仕組みをつくっています。プレミアムリスナーに向けてパーソナリティが特別なコンテンツを用意したり、ファンのエンゲージメントを高めるようなマネタイズ機能を2020年にリリースしました。他にも様々なアイディアがある中で、どれを実現していくのかを考えるのは面白いです。 また、音声領域ではまだ成功したサービスが世の中にないので、自分たちで正解をつくっていかなければならないことも多いです。もちろん難易度が高いですが、だからこそエキサイティングで楽しいです。

Voicyが大きく前進したきっかけ


(勝村)これまでに開発した機能の中で、事業の前進に大きく寄与したものは何ですか?
(大枝)入社後すぐに担当することとなったプロジェクトなのですが、プレミアムリスナー機能はとても大きかったと思います。パーソナリティがマネタイズできる仕組みの拡充はVoicyの課題でもあったので、マネタイズの仕組みを実現できたことは良かったですよね。
(勝村)プレミアムリスナー機能は、サブスクリプション型にしたことが大きかったですよね。緒方さんはどうですか?
(緒方)一番初めの話になるけど、10分尺や、音声編集ができない・BGMを選べない仕様にしたこと。“できなくする”ことに舵をきるのはかなり勇気のいることで、最初は半信半疑で面白さと可能性に賭けてやって、数年後の今になって「正解だった」とわかったんだよね。
(勝村)エンジニアリングマネージャーの山元さん、エンジニアリングの面で事業が大きく前進したきっかけなどはありましたか?
(山元)技術面では、当初は共同創業者でエンジニアの窪田が一人で次々とアウトプットをしていくようなスタイルでつくっていたのですが、少しずつメンバーが増えチームで開発をしていく体制になり、属人化しないシステムや安定稼働をするシステムを目指すため、アーキテクチャやインフラの仕組みをリプレイスし、モダンな開発環境を作ってきたのが今のVoicyの開発組織です。僕はデータチームの責任者もしているのですが、Voicyには熱量の高いユーザーが集まってくれていて、継続率がとても高いんです。音声で人を届け、聴きたいと思える体験を提供できているということもデータからわかっています。今後はレコメンドなどに注力していきたいですね。
(緒方)Voicyの開発組織は、変化に対応する力が強くなっていると思う。ユーザーと触れ合う中で起こるピボットに対して、フットワークが軽くなっているよね。あと、みんなすごく楽しそうに仕事してる。ユーザーや顧客の体験を考える視点を持てていて、良いチームになったなと思うよね。
(勝村)文化をつくるために新たな攻めの機能を出しつつ、エンジニアリングの文脈では決済基盤など、守備的だけど難易度の高い機能もつくりましたよね。
(山元)まさにそうですね。プレミアムリスナー機能の裏側では、Voicyに今までなかった決済をするための機能や、それに伴うセキュリティなどのシステム設計がありました。綿密に設計をおこない、現在は大きな事故もなく運用できています。重要な設計となるためチャレンジングでしたが、面白い経験ができたと思っています。
(勝村)プロダクトやエンジニアリングで、構想していることはありますか?
(緒方)日本人のほぼ全員が喋り、聴くようなサービスを目指すと考えると、品質をしっかり上げていくところをやっていきたいし、開発スピードを上げて、何が来ても受け止められるような組織体制をつくる必要があるよね。パーソナリティとリスナーをマッチングさせるために、どうデータを見るかや、どう検索してもらうかを突き詰めたいし、パーソナリティのマネタイズプランはもっと増やせると思っているので、発信者のパターンが増えていくのかなと思っています。 動画やテキストに比べると小さい産業だと思われるかもしれませんが、“喋る人”は人口の中で最も多いと思います。ながら聴きができるという特徴から、身の回りの様々なものとも連携していけるので、できるだけ多くの人が使えるような対応をしていきたいです。
(勝村)Voicyに限らずとも、国民全員が音声に触れている世界をつくっていきたいですよね。どういうことをやっていくと、実現するのでしょうか?
(大枝)先程緒方から“マッチング”の話がありましたが、音声は発見性に弱いと思っています。動画やテキストは見るだけでなんとなく内容がわかることもありますが、音声はコンテンツを聴かないと内容がわからなかったり、発信者の人となりを掴みづらかったりするんですよね。音声の見せ方や広げ方の正解をまだ僕たちも見つけられていないので、解像度を高めて施策を実施していくことで、より広がりが生まれるだろうと思っています。
(緒方)音声コンテンツの要約や書き起こしが、できるかどうかを考えるのは面白いよね。あとVoicyではユーザーデータを詳細に取っているので、それを元にレコメンデーションをしていきたいし、どのようなコンテンツが面白がってもらえるかなども今後わかってくると思う。リスナーにも、コンテンツのオススメやプレイリストの作成など、音声だからこその新たな体験を生み出していきたいね。
(勝村)確かに。聴く以外の楽しい体験を、もっと作れるといいのかもしれないですね。
(緒方)うん。Voicyは“音声”にこだわっているというよりも、“人を届けるプラットフォーム”だと思ってるんだよね。暇つぶしではなく豊かになれるコンテンツを、魅力的な人たちが発信してくれる世界の中で、音声だとすごく簡単に毎日発信することができる、ということを実現している場所だと思っているので。“音声だけ”と幅を狭めずに、様々な形で築いていけるようにしたいね。
(山元)ここの分野は本当に面白くて、エンジニアリングしがいがあると思います。音声の発見性の難しさについてSpotifyが論文を出していますが、技術的なブレイクスルーはまだ発見できていないと思うんですよね。一方で、リスナーがどんな音声コンテンツを聴いているのかのデータを取る中で、好みの特性なども見えてきているので、マッチングは必ず実現できると思っています。アルゴリズムや機械学習モデルでできるかもしれないですし、あるいは音声の波形データを使った分析が効果的かもしれません。パーソナリティ同士のソーシャルグラフも有効な情報になり得ます。リスナーにとって楽しい音声を届けることはもちろん、違うシーンで必要な音声をレコメンドしていくこともできると思います。Voicyでは、音声データが全てデータレイクに溜まっていますし、これまでの波形データやSNS情報も活用できると思うので、これから出会いの創出にもっとチャレンジしていきたいです。
(勝村)発信者側と受信者側のそれぞれの体験が、既に相当量データとして溜まっていますよね。データレイクやITを、どう活かすと音声の未来がより進むのでしょう?
(緒方)僕たちは将来、音声が“ライフフィットメディア”になるところを目指しています。生活を豊かにするうえで、好きなタイミング且つ好きなことをしているシチュエーションに、好きなコンテンツを届けるという、タイミングとシチュエーション、内容の全てがフィットする状態でのレコメンドは、音声だからこそ叶えられるものだと思っています。
(勝村)位置情報との掛け算はよくあるサービスだと思いますが、そこに行動や興味まで掛け算できるので、確かに珍しいですよね。
(緒方)音声は長く触れていられるので、何時間聴けるのかというような継続的な情報が手に入ります。また、コンテンツは生活を止めた状態で受け取るものが一般的なので、「ながら」で楽しめるものは音声だけ。何をしながら音声を聴いているのか、「With」がわかるのも特徴だよね。

声で未来を変えるために、つくりたい組織とは


(勝村)音声の未来をつくっていくうえで、どういう組織にしていくのか。どういう開発体制や、チームをつくっていくのか。そのためには今どんな人が足りていないのか、について話していきたいと思います。エンジニア組織でいうとどうですか?
(山元)僕はVoicyを、“日本を代表するテック企業にしたい”と思っています。エンジニアリング力の高い組織となり、社会にも認知されていて、そのエンジニアリング力で価値を生める会社にしていきたいんです。発信しやすい環境や音声のクオリティ、データ周りなど、もっと良くしていけると思っていますし、BtoCプラットフォームとしてグローバル化していくとなれば信頼性の担保もますます重要となり、エンジニアとして難しいながらも面白い経験が待っていると思います。こういった部分にバリューを出せる組織にすることが、これからの目標であり挑戦で、音声はまだ新しい領域になるので、これまでの経験を活かしつつも新しいことにチャレンジしていけるような方と一緒に働きたいと思っています。
(勝村)Voicyでは、行動指針の一つに「世界基準」という言葉がありますよね。世界基準のエンジニア組織にしていくためには何が不足・充足していますか?
(山元)価値創造のための機能開発や、それに向かうチームワークは既にできていると感じています。Voicyには、チームで協働することの得意なメンバーが多いんです。現在は、エンジニアが開発のことだけを考えるというより、パーソナリティの体験向上をイシューとするチームや、リスナーの体験向上をイシューとするチームなど、ユーザーにどう価値提供するかから考える開発体制を取っています。日本を代表するテック企業になるには、スピード感を持って開発することや、信頼性を上げていくことが重要で、そのキーになるのがシステムのアーキテクトだと思っています。今後はアーキテクトをより突き詰めていったり、先導できる方にジョインしてもらえると、より大きなバリューを生むことができると考えています。
(勝村)ありがとうございます。プロダクト側はどうですか?
(大枝)先程「世界基準」という話が出ましたが、Voicyを本気で、世界を代表するようなプロダクトにしたいと思っています。音声は新しい領域なので、YouTubeやInstagramなどのSNSプラットフォームや、Netflixのようなメディアもベンチマークにしながら議論しつつ体験設計をしています。音声は、動画やテキストに比べて配信するコストがすごく低いですし、ながら聴きという特徴も持っているので、まだ誰も成功させていない体験として、どう料理していくかだと思っていて。未知数なことが多い中で、ユーザーの意見やデータ、社内議論から出てきた内容から導き出せる最適解をチームでつくっていく必要があると思っています。体験を生み出せる組織をつくっていきたいですね。
(勝村)“体験を生み出せる組織”というとかなり抽象的ですが、プロダクトマネージャーでいうと、具体的にどんなことが求められるんですか?
(大枝)一番必要なのは、“決める力”だと思います。ディスカッションをする中で、緒方が悩むシーンもすごく多いんですね。様々なファクトや情報がある中で、最適解を選択して決断し、実行していくことはとても重要ですし、僕自身が意識しているところでもあります。どのプロダクトも正解がない点は同じだと思いますが、中でも音声は事例がほぼ落ちていない領域となるので、体験を考えつつ決めていくことが求められます。
(勝村)確かに。明確な競合がないため、参考にする対象がないですよね。一方で類似領域は多いじゃないですか。動画やテキスト、ライブ配信などがある中で、何のエッセンスを入れるかは悩むポイントになりそうですね。
では最後に、緒方さん。経営視点で思う、「声で未来を変えるプロダクト」を作れるチームについて聞かせてください。
(緒方)“成長できるチーム”だろうなと思う。即戦力人材だけを集めればすぐ形にできるというものでもないので、今まで得た知識や経験を応用するだけでなく、社会やユーザーに学びながら、自分たちが成長してもっと良いものを作るというスタンスが必要なのかなと。そうなると、知的好奇心や知的謙虚心のあるチームが強いと思って、積極的に学び、大きな山を圧倒的に超えるための力をつけていくためのチャレンジを出来る人がマッチすると思いますね。一人の力で叶えられるものではないので、チームワークを大事にし、メンバーを引き上げながら大きな山を超えるために自分には何ができるかを広い視野で考え、土壌をつくっていってほしいなと思っています。
(勝村)僕も“成長”は重要なキーワードだと思っています。CxOレイヤーとなると、大多数の方が「培ってきた経験から何を還元するか」という発想を持つので、それだとVoicyにはマッチしないなと思いますね。
(緒方)そうだよね。70代くらいまで働くと考えると、初めの10年間に得た経験だけでその後何十年もやっていくのは難しい話で、常に新しいことを学んで成長していくことは、これからの世界でも求められるものだと思います。Voicyで誰もやったことのない事業や新しいことを切り開く事業にせっかく携わるのであれば、これまでの経験から、さらに新しいことを身に着けていってほしい。それが「面白い」と思ってくれる人と働きたいな。
(勝村)あと、ジョブ型が流行る今の時代と逆行しているような表現ですが(笑)。つまり「プロダクトのために、やれることは全部やる」というスタンスが求められているということでしょうか?
(緒方)うん。Voicyは難易度の高い挑戦をしているし、社会に大きなインパクトを与えようと思うと、周囲から飛び抜けた努力や能力におけるアウトカムが必要になる。20〜30代で作った貯金を磨きアウトプットを出すことはもちろん出来るけど、何歳になっても周りが広く様々なことにチャレンジし、成長し続けている組織のほうが面白いと思うし、その環境を提供できることも会社の価値なんだと思う。
▼ トークセッションの音声は、こちらからお聴きいただけます。
 

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