<シリーズ第二弾>【27.3億を調達したVoicyが考える】声で未来を変える“コンテンツ/事業開発”とは
Voicyはこの度、27.3億円の資金調達を行うことができました。日々サービスを使ってくださる皆様のおかげです。改めてお礼をお伝えさせてください。ありがとうございます。
次のステージに向けたテーマは、「声で、未来を変える。」です。今後、どのように非連続的な成長を目指していくのか。代表緒方と各部門リーダー陣が三回に渡ってトークセッションを行い、これからのVoicyについて語りました。
第二弾は、“コンテンツや事業開発”を軸に未来を考えます。
▼ 第一弾「プロダクト/エンジニアリングについて」はこちらからお読みいただけます。
<登壇者>
・緒方 憲太郎(代表取締役CEO)
・長谷部 祐樹(ビジネスデザインチームリーダー/PRチームリーダー)
・奥中 綾(メディアコンテンツチームリーダー)
<ファシリテート>
・勝村 泰久(人事執行役員)
資金調達の背景にあった、Voicyの2つの強み
(勝村)まず緒方さん、資金調達お疲れさまでした。振り返ってみていかがでしたか?
(緒方)大変だった。もし資金を集めきれなかったら会社を解散しないといけない、というプレッシャーがあったね。世の中にないものを創ることは投資家の方々に理解されにくいし、文化が出来てきても事業になるまではタイムラグがある。YouTubeもTwitterもそうだったように、始めは無料のサービスとして発展させていく中で、大きくなってからビジネスになるケースも多いんだよね。スマートフォンもこんなに大きなマーケットになるなんて、始めは誰も知らなかったと思う。まだ駆け出しのフェーズで「今後どう稼ぐのか」を問われても正直難しい中で、理解者を集めていかないといけないところに苦労したね。
(勝村)大変な中で行った資金調達だったわけですが、今回のテーマでもある“事業やコンテンツ”という点でいうと、何が投資家の方々に評価されたのでしょうか?
(緒方)世の中にコンテンツが溢れている今、良質な井戸を掘り当てたというのはVoicyの強みになっていて。質の高いコンテンツが集まっている背景に関心を持ってくれる方は多かったし、良質な世界観を継続できていることは大きく評価されたと思います。あと、ユーザーに喜んでもらえるサービスを作っている点。実際にアプリ評価などからもユーザーの満足度の高さが表れているし、ユーザーを喜ばせるためには妥協しないという姿勢が評価された。反面、ビジネス的な数字にこだわる投資家の方からは、全く相手にされなかったね(笑)。
(勝村)“コンテンツの質の高さ”を、投資家の方々は何で判断したんでしょう?
(緒方)一つは、他にないオリジナリティ。もう一つはユーザーのスティッキネスだね、継続率が高いところ。あと、Twitterやアプリストアにあった「Voicyで人生が変わった」「他では聴けない話がたくさんアーカイブされている」などのユーザーコメントにも背中を押してもらえた。
(勝村)ユーザーの継続率は半年で22〜23%が一般的と言われていますが、Voicyは30%と高い結果が出ていますよね。事業や売上などの観点で言うと、どういった経緯から現在の商品の形になってきたのでしょうか。
(緒方)2016年創業当時は、ビジネスになるかどうかすらわからず、とりあえずユーザーが喜んでくれたらいいと思ってやってきていて。初めの一年は、僕も共同創業者の窪田も給料のない状態でサービスを作っていたんだよね。一定の数字が出てきたとき、稼ぐというより発信者のブランディングをしたいという思いから、最初に取り入れたのがスポンサーモデルだった。しばらくはスポンサーメインで走りつつ、コンサル業やイベントで必死に売上を担保して。その後、徐々に企業がVoicy上でチャンネルを持つためにお金を払ってくれるというマネタイズモデルが出来てきて、それを“VoicyBiz”という商品として展開するようになり、そこからクローズドチャンネルでも企業に利用してもらおうとなって、“声の社内報”という商品もできた。その頃にビジネスプロデューサーの長谷部が入社してくれて、ハッシュタグ企画やタイアップでの番組制作など、新たな商品が開発されてきたんだよね。
(長谷部)法人のお客様に向き合うチームができてから、まだ一年ちょっとなんですよね。つまり、Voicyというサービスができてから5年くらいはユーザーにとっての良い体験を突き詰めていて、売上がなかったんです。
(勝村)なるほど。音声メディアとして、コンテンツ側のこれまでの変遷はどんなものだったんですか?
(緒方)一番初め、Voicyのキャッチフレーズは「声で聴けるニュースアプリ」だったんだけど、ニュースを読んでいても中々盛り上がらなかった。そんな中、ニュースアプリと謳っていたのに全く関係ない自分の話をひたすらするチャンネルが伸びて、「フリートークって需要あるんだ」と気づいたんだよね。カジュアルに喋ってもらうにはどうすればいいか考えていたとき「ブログのように喋ってもらおう」と思いついて、方向転換して「声のブログ」というキャッチフレーズをつけた。そこから有名なブロガーの方々が入ってきてくれるようになって、サービスが一気に拡大したのが2018年頃かな。始めは自己啓発系のコンテンツが多かったんだけど、途中でビジネスやヘルスケア系のコンテンツが生まれて、ジャンルが広がるうちに“自分の生き様”というか、ライフスタンスについて話す人が増えた。最近はInstagramから、ライフスタイル・暮らし系のパーソナリティも増えてきているよね。全体的に求められているのは“正しい情報”ではなく、生きるために必要な“生の情報”で、「誰かの話を聴くことで未来が開けた」というユーザーが多いように思う。
(勝村)2018年頃からは、“人”を届けていたわけですね。
(緒方)そうだね。ずっと人を届け続けていたら、少しずつ時代のニーズと合ってきたような感覚がある。
企業の理解者を増やし、リスナーを最適なコンテンツと出会わせる
(勝村)これまでの経緯を聞いてきましたが、ここからは「今後どのようなチャレンジをしていくのか」について聞いていきたいと思います。ビジネス領域において、長谷部さんが思い描いているものはありますか?
(長谷部)Voicyは始めの5年ほどtoCサービスとして走っていて、発信者は圧倒的に個人の方が多いのですが、実は今、法人やメディアのクライアントが非常に増えています。Voicyがこれまで培ってきた“声の魅力”を活用し、プロダクトとビジネスの両輪から体験を作ることで、企業により使ってもらいやすいサービスにしていきたいです。
(勝村)法人利用の目的としては、プロモーションやマーケティング、ブランディングなどになるのでしょうか。
(長谷部)そうですね。近年、コンバージョンを目的としたプロモーションが飽和してきている中で、自分たちが何をやっているかを生の声で続けたり、もしくはVoicyで既に愛されている個人パーソナリティとタッグを組むことによって、リスナーに活動を応援してもらったり、企業自体を好きになってもらうためのアクションとしてご利用いただくことが多いです。
(緒方)ファンプールをつくったり、理解者を増やしたり、深い層を獲得していくことが今後は重要になっていくのかなと思う。数年前の企業は「ロイヤルカスタマーはたくさんいるから、とにかく新規を獲得したい」というニーズが多く、ユーザープールを持っているサービスへのアクションが多かった。それが徐々に、顧客に使い続けてもらうことが難しくなったり、マスへのプロモーションがアンチに繋がったりと、これまでのやり方が通用しないケースが増えてきたんだよね。そんな中で、ファンを着実につくっていくという方法が目を向けられ始めている。僕たちは、時代に合わせた商品を作っていく必要があるなと思うな。
(長谷部)今Voicyに、アトラエ社の“Green”というサービスがスポンサーで入ってくれているのですが、担当者の方に「これまで様々なプロモーションを実施してきましたが、“CMしていますよね”とお声がけいただくのは、テレビとVoicyだけなんです」と言っていただいたんです。おそらくデジタルマーケティングなどのほうが大きな金額になりますが、Voicyのほうが生活者からの反響があるというのはすごく嬉しいですし、音声の効果として代表的な例だなと思います。
(勝村)なるほど。法人の活用事例を増やすためにも、出稿や管理、ファンへのアプローチのしやすさなど、機能向上に注力していくということなんですね。
(緒方)今後企業が音声コンテンツを作るようになったら、すごく面白くなるんじゃないかな。YouTubeで動画をアップしている企業が増えてきているけど、音声は動画の4%ほどのコストで制作できるし、受け手に伝わりやすいツールなので、発信チャネルの一つとして必ず持たれるようになると思う。
(勝村)スコープを5年に広げたとして、ビジネス領域でやりたいことはありますか?
(緒方)めちゃくちゃいっぱいある。例えば今、オンラインサロンへVoicy経由で参加する人がすごく増えているパーソナリティの事例があるのだけど、パーソナリティとリスナーがコミュニケーションを取っていけるようになると、Voicyを聴くことが購買に繋がるようになると思うんだよね。だからボイスコマースとかすごくやりたい。あとはもっと連携先を増やしていきたいな。例えばスポーツの試合前に選手の意気込みが聴けたら良いかもしれないし、美術館の案内を5人組のアイドルが毎日入れ替わりで放送したら、同じ人でも5回足を運んでくれるかもしれない。ユーザーをさらに喜ばせるために音声連携を広げていけたらいいなと思ってる。
(勝村)音声によって、事業の可能性を広げていくんですね。
(緒方)そうだね。アイディアはたくさんあるけど、人が足りない!
(一同)(笑)。
(勝村)ビジネス領域について話を聞いてきましたが、メディア/コンテンツ領域だとこれからどんなことをやっていこうとしているのでしょうか。
(奥中)“人を届ける”という世界観を守り続けることはもちろん、今後はより編成・編集の観点を強めていきたいなと思っています。今は人軸での訴求がメインになってしまっていますが、コンテンツ軸でもVoicyや音声の良さを届け、新たにVoicyへ訪れてくれるリスナーを増やしたいなと。現在、トークテーマを決めてパーソナリティに話してもらうという特集企画をやっているのですが、リスナーからは「新たなパーソナリティと出会えました」、パーソナリティからは「まさにこういうテーマについて話したいと思っていたんです」などの声をいただいていて、非常に好評です。
(長谷部)チャンネルコンセプトなどの理由から普段は話さないけど、Voicyが出しているトークテーマだから話すことができる話題があるってことなんですね。
(緒方)切り口を変えれば、リスナーに最適なコンテンツを届ける方法はまだまだたくさんあると思う。
(勝村)5年スコープだとどうでしょう?
(緒方)Voicyにはなんでも揃っている状態にしたい。例えば、何かについて「学ぼう」と思ったとき、本屋さんのように「とりあえずVoicyに来ればピッタリのコンテンツがある」と思ってもらえる状態にまで持っていきたいよね。
これから“求められるコンテンツ”とは?
(勝村)ではここからは、質疑応答の時間にしたいと思います。一つ目は、「Voicyの認知と利用者拡大に向けてこれからしようとしていること、企業でのサービス利用の広げ方で必要となるものはなんですか?」という質問をいただきました。まず前者の“認知と利用者の拡大”についてイメージしているものはありますか?
(緒方)とにかく多くの人に広げるというよりも、まずは本当に聴きたいと思っている人に届けつつ、じわじわと拡大していくのがいいかなと思っています。今のフェーズで大きく広告を打ってユーザーを呼び込んでも、聴きたいコンテンツがなかったり、上手く出会えなかったりする可能性があると思っているし、まだやりたいことの5%も出来ていない状態なんだよね。だからこそコンテンツやパーソナリティを増やしながら、喜んでくれるリスナーにしっかりと届けることを繰り返していきたい。認知の広げ方として大事にしているのはPRとブランディングで、どういう世界観を、どう理解してもらうか、ということをやっています。あとは、より多くのリスナーをリーチできるようにパーソナリティを支援していくことも大事だし、コンテンツのプロモーションについても考えていく必要がある。ユーザープールを持っている企業とのアライアンスを組むこともやっていきたいね。
(奥中)パーソナリティは一人一人魅力的なコンテンツ配信をしてくれていますが、個人だけでなくパーソナリティ同士のコラボをしていただくことで、新たなソリューションが生まれることも。こういった動きをより推進していけるように考えていたりしますね。
(緒方)聴いたひとが一歩前に進めるような、誰かの行動に影響を与えられるものにしていきたいよね。いつかこういったコンテンツが、もっと求められるときが来る。目の前の利益というよりも、ユーザーが求めている、社会が必要とするものを目指していきたいな。
(長谷部)BtoB領域でいうと、Voicyが法人向けにも活用できることをまだまだ知られていないので、まずは様々な手法を通して“知ってもらう”必要があると感じています。既にVoicyを活用してくださっているクライアントの事例発信や、自分たちとしても成功事例について「なぜ上手くいったのか」を深ぼって言語化していくことが必要だなと。今「パーソナリティとの接触回数がこのラインを超えると高感度がさらに高まる」など、Voicyの中に少しずつデータが集まってきています。“声の良さ”を漠然と理解している方は多いと思うものの、企業となると社内稟議を通す必要なども出てくるため、音声の効果を伝えられるような情報をしっかりと提供していくなど、やれることはたくさんあると思っています。
(勝村)音声は効果的なツールにも関わらず、なぜ知ってもらいにくいんでしょうかね。
(緒方)Voicyは制作コストが低い分、広告を出すとなったときに関連して儲かる人が少ないから売りにくいんだと思う。
(勝村)なるほど。音声の文化は生まれたけど、まだ産業になりきっていないフェーズなんですね。
(長谷部)でも僕が入社した一年半前に比べると、「一緒にやりたい」と言ってくださる企業はかなり増えたと感じています。入社当初は代理店比率がすごく少なくて、一社しかなかったんですよね。なぜかと思ったら今まさに緒方さんが言ったような理由だったのですが、実際に話してみると音声に興味を持ってくださる方は多く、「提案したい」と言ってくださる代理店も着実に増えてきています。「一緒にセミナーやりましょう」というような動きも活発になっていて、最近は毎月のようにセミナー開催のお声がけをいただくなど、動きが変わってきているのを感じますね。
(奥中)うん。プラットフォーム内の音声配信者もかなり増えています。
Voicyのリーダー陣が大切にしていること
(勝村)続いて「Voicyのリーダーとして大切にしていることはなんですか?」という、すごく良い切り口の質問をいただきました。どうでしょう?
(長谷部)僕はビジネスチームとPRチームのリーダーをしています。企業とお話をすることの多い仕事ですが、先述した通りまだ価値を理解してもらいきれていない音声領域だからこそ、上手くいかないことの連続です。そんな中でも、様々なことへチャレンジしやすい環境をつくり、メンバーが伸び伸びとやりたいことをやれるチームにしたい。やりたいことをやって失敗するのは納得感が持てると思うのですが、「これやって」と言われたことをやって失敗するのは仕事がつらくなってしまうと思うので、僕はどちらかと言うと、自ら先導していくよりもメンバーが挑戦できるような場づくりを意識しています。
(奥中)私たちは音声プラットフォームVoicyの最前線でパーソナリティやリスナーに対応するチームなのですが、メンバーには「固定概念を持たないように」とよく伝えています。様々なバックグラウンドを持つメンバーが集まっているので、積極的に周りのメンバーの良いところを盗み、チーム力を上げていこうと意識していますね。
(緒方)リーダーとして大切にしてること、かっさん(勝村)は何かある?
(勝村)ビジネスやプラットフォーム側とは発想が異なると思いますが、人事は経営が作りたい組織を具現化していく仕事なので、“Voicyのリーダー × 人事”で考えると緒方さんの世界観をどれだけ叶えるかだと思っています。緒方さんがやりたい世界観・組織感に合わせているので、キックオフなどの人事施策は結構エモく作っていますし、それが楽しいと思うメンバーを集めているのでエンゲージメントも上がりやすいんです。
(緒方)なるほどね。僕は「人が喜ぶ価値を生んでいるか」にずっとコミットしていると思う。「喜ぶ」というのは“儲かる”だけでなく、“ワクワク”するとか様々な要素があって、そのためにもユニーク&ユーモアやオリジナリティを大事にしているんだよね。人が喜ぶ価値を生めていたらなんとかお金になるだろうと思っているし、逆に価値が生めなくなったら怖い。もっともっと価値を生むために投資できないか、そんなことばかり考えているね。
(長谷部)この話は、社内でもいつもしていますよね。
(勝村)価値を生んでいるかを問い続けるということですね。次の質問ですが、「他のリーダーとの印象的なエピソード教えてください。」といただいています。
(奥中)そうですね。入社当初は経営企画側の業務が多かったのですが、今回の資金調達にも結構関わっていて。緒方さんは大きいことや面白いことを考えるのが得意だけど、具体的な事業計画に落とし込むところは苦手なので(笑)。そこをコーポレート責任者の中川と一緒にたくさん話し合って、投資家の方々に断られ続けたときにも「大丈夫だよね、どうにかなるよね」と鼓舞し合えていた時間がすごく良かったなと。
(勝村)あの頃、二人で本当にたくさん話し合っていましたよね。だからこそお互い頑張れていたんですね。長谷部さんはどうでしょう?
(長谷部)すごく良いエピソードの後で、今それを超えるものが思いつかないので、ちょっと面白い話になってしまうのですが。VoicyというサービスはtoC・toBともに使ってもらっていますし、24時間365日動いているサービスなので、本当に色々なことが起こるじゃないですか。ある日緊急で対応をしなければならない出来事が起こり、リーダー陣が夜中に急遽集まってオンライン会議を開いたんです。その時、一人だけすごく声が反響している人がいて、「どうしたんですか?」と聞いたら「ごめん、今湯船に入っています」と(笑)。
(奥中)ありましたね(笑)。
(長谷部)お風呂へ入っているのに、急遽招集されたオンライン会議へ対応した彼のプロ意識に僕は感動しましたね。ちょっとやり過ぎではありますけど(笑)。もちろん良いこともあればピンチもあるので、いざというときに集まれるリーダー陣はやはり頼もしいなと。
(緒方)色々なドラマがあるよね。そういえば先日、共同創業者の窪田さんとランチに行って、「成長をしているか」という話になったんだよね。自分が社長をしていると「成長を提供しなきゃ」という気持ちになるし、成長できないと思ったら辞めてしまう人も出てくるので、窪田さんは成長を感じているのかが気になって。ただ、窪田さんから出てきたのは、「成長に繋がらなくとも、誰かがやらないといけないことをやることで、周りのメンバーの生産性が上がり、より良い環境になるならいい。しようと思えば成長はどこでもできる。」という話で、同じゴールへ向かうことを考えてくれていると改めて感じられて嬉しかったんだよね。
(勝村)創業者同士らしい、良いエピソードですね。
▼ トークセッションの音声は、こちらからお聴きいただけます。